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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあい、娘3人、黒猫との、5人と1匹暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。
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2010年11月 9日 (火)

つぎのこと

 眠くて眠くてたまらないことがある。

 それは時期、というもののようで、ある日がさっと束になって落ちてくる。
 それが落ちてくると、「やれまた、きた」と思い明らめて——あきらめるのではなく、はっきり認めて受け入れる——なるべくたくさん眠るように心がける。
 もともと眠るのが好きな質(たち)だ。
「眠る時間も惜しい」とばかりに、1日睡眠3、4時間で活動するひとを見ると、つい、こう思いかける。住む世界がちがうのかしらん、ちがう種類の(属の?)人間なのかしらん、と。いや、わかっている。ちょっとちがうだけだと、ほんとうはわかっている。
 ちがいはちがいとして、意固地にならずにそれぞれの生き方をすればいいのだと悟ったのは……、さて、いつだったろうか。

 眠くて眠くて……の時期は、「一度動きをとめて、つぎのことにそなえる」必要のあるときに、めぐってくる。そうわたしは、受けとめるようにしている。
 その時期には、必要最低限のことしかせずに、仕事と仕事のあいだにも眠り、眠りと眠りのあいだには用事をし、という塩梅だ。こんな風に、さもなんでもないことのように話せるようになる以前、つまり、その癖のようなのをそれと自覚する以前は、自分をなんという「なまけたがり」かと恥じていた。
 これは困ったことになった。こう「なまけたがり」で「眠りたがり」では、定職にはつけないのではないか、と思った。しかし、20歳の年から約10年、出版社の編集部に勤めた。その10年間をふり返っても、なんだかやっぱりよく眠っていた。眠さが募ると、会社の小さな個室にこもって、くーくー眠る。

 電話が鳴る。
 電話の呼びだし音ほどきらいなものもないけれど、眠っているときに聞くそれは、もう……。
 黒電話の重たい受話器を持ちあげる。
「すみません。急ぎの用件だったもので」
 わたしがここにこもっているのを唯一知っている同じ部の後輩が、切羽詰まった声でささやく。
「うん」
「ダイニッポン(インサツ)から電話で、急ぎ連絡がほしいそうです」
「わかった。ありがとね」

 家にいてひとりで仕事をするようになって数年がたったころ、ああこれは、もしかしたら「なまけたがり」ではなくて、時期ものなのかもしれないと気づいた。わたしはそう眠ってばかりはいず、仕事もして、約束の仕事は期限内に納めているからだった。だんだんに、それがわたしの「一度動きをとめて、つぎのことにそなえる」であるらしいことも、わかってきたのだった。
 ともかく。眠くて眠くて……の時期がいつ頭の上に落ちてくるかわからないから、そうなる前に、できることはしてしまおうという心づもりも生まれた。心づもりをひとところに集めて、一気に用事を片づけようという算段だ。

 だらだらとわが性癖について書かせたのは、木杓子だ。
 わたしの部屋の書架の、本と棚板のあいだでじっとしていたはずの3本が、「『一度動きをとめて、つぎのことにそなえる』時期の必要について書いてくださいよ。わたしら、じゅうぶんそれをさしてもらって、また動きだそうというんですから」と云った。
 これまた、わたしの手もとのさもなき話だけれども、だいどこの、ご飯のしゃもじ、カレー専用の木杓子(カレーの黄色に、存分に染まってもらっていいように、専用)、万能木杓子の3本をあたらしくした話をおぼえてくださっている方があるだろうか。ことしの1月のことだ(ブログへ)。
 その3本は長く、長く働いたからくたびれていた。が、わたしは、それを捨てられずに、書斎に持って入って、書架のすき間にさしこんでおいたのだった。3人は、「ここは、どこか」「こんなところが、あったんだなあ」「なあ」と、しばらくのあいだ、ささやき交わしていたが、その後すっと眠ってしまった。

 その3人が目を覚ました。
 3人は、覚めるといきなり、「以前とは、ちがう仕事をはじめることにしました」と、口口に云ったのである。
「一度動きをとめて、つぎのことにそなえる」とは、いったい何だろう。
 ひとによって、そのやり方はまちまちであるらしい。

Photo
元カレー専用の木杓子は、
夫の仕事場で働いています。

夫への頼みごとを貼りつけて、
黒板のすみっこに置いています。
頼みごとを、何度も何度も口でするのは
うるさいですし。
(けれども、ときどき夫は頼んだことを忘れます)。

黄色に塗った(アクリル絵具を使いました)のは、
「ちょっと目立つ」を期待してのことです。
ちょっと……ね。

※玄関とびらのちょうつがいの具合がおかしいので、
 点検を依頼しています。


Photo_2
元万能木杓子は、こうして……。
子どもたちの部屋のある3階への階段上、
共有の衣類と下着をしまう開き戸のなかに、
吊るしました。

3人の子どもの誰ともなく、頼みたいことを
貼りつけています。

※クスリ屋の前を通りがかるひと、ついでのあるひとに、
 買いものを頼んでいます。

もうひとつ、
元しゃもじは、
移植ごてに転身するべく、準備ちゅうです。
先のほうを「それ」にふさわしいように、
削っています。


|

コメント

はやし あいさま

おめでとうございます。
男の子のお母さんに、なられたんですね。

とても、うれしい……です。

携帯電話からも
見ていただけるんですね。
すごいなあ。

赤ちゃんのいる暮らしを、
たのしんでくださいね。
赤ちゃんは、たちまち赤ちゃんで
なくなってしまいます。
赤ちゃんの面影は、
いつまでも「こちら」のなかに
在りつづけますが。

ぼんのくぼや、
ちっちゃいもみじの葉っぱのような手、
やわらかいほっぺ、
それに泣き声も。
それは、ほんものの赤ちゃんの
特権、そのときだけのもちものです。

元気でいてください、お母さん!

投稿: ふ | 2010年11月15日 (月) 09時35分

ふみこさま

ほんとうに久しぶりにお邪魔させていただきました。

初めての息子が生まれ2ヶ月たって、毎日が息子一色です。
息子が眠る時間に、携帯電話からも読める!とわかってまたゆっくりとお邪魔できてすごくうれしいです。

木杓子の行方、とても愉快。
わたしも知恵を働かせ、引退していく道具たちをキラキラさせてあげたいです。

投稿: はやし あい | 2010年11月15日 (月) 05時29分

いとうさん

なかなか受け入れられない……。

わかります。

常とは異なる状態に陥ると
(眠気のほかにも)、
もうずっとこうか……と考えてしまったり。

気持ちも、常とは異なる
おかしな状況に向かうのでしょうか。

佳いきょうを。
どうもありがとうございました。


投稿: ふ | 2010年11月11日 (木) 05時59分

「一度動きをとめて、つぎのことにそなえる」 

ふみこさんにも「眠くて眠くてたまらない時」があると知り、安心しました。

実は私もあります。
な~んか やる気がおきない日々が続くんです。
でも、それを抜けるとやる気満々!
すっごく元気に過ごせます。

「きっと(やる気が無いときは)充電してるんだろうな~」と 薄々感じていますが
なかなか受け入れられないです。

でもでも、いつか受け入れられると信じて、今年も過ごします!

また、きます。おじゃましました。

投稿: いとう | 2010年11月10日 (水) 21時04分

ぽんぽんさん

お誕生日、おめでとうございます。

わたしは、ぽんぽんさんの
お誕生日の作用なのか、きょう、突如、
高尾山に登ってきました。
紅葉が、うつくしくて、
じーんとしました。

佳いことがたくさんの、
そして、そのひとつ残らずに
気づける1年を。
Happy birthday to you.

投稿: ふ | 2010年11月10日 (水) 17時21分

えぞももんがさん

いやあ、穏やかに、
台所で働いていた木杓子たちが、
伝達という仕事をあたえられたことは……。
馴れぬ仕事に、とまどっていることだろうなあ、と
思ったりしています。

いろいろな面で、
負担が大きすぎないように、
伝達のないようについては、
留意いたしたいと思います。

眠りましょう。
眠りましょう。
(あのね、こんど、えぞももんがさんに
おそわったことを手がかりに、眠りのことを書きたいと
考えています。12月になるでしょうか。
気がついていただけたら、うれしいです)

投稿: ふ | 2010年11月10日 (水) 17時18分

ふみこ様 皆様
こんにちは

ぐっすり眠れるって、幸せなことですよね。
世界のどこかでは、未だに争いがあって、ぐっすりとは眠れない人達だっているでしょう。

実は今日誕生日を迎えました。年々「あら、また歳とっちゃったわ」くらいにしか思わなくなりつつありますが、「生きてるんだわぁ無事に誕生日を迎えられてよかった」と思うようになりました。

何かしなきゃと焦る気持ちもありつつ…
今日からの毎日をまた一つずつ大事にしたいと思います。

ふみこ様のエッセイやblogから暮らしのエッセンスを頂きながら。

改めて…いつもありがとうございます(^O^)/

投稿: ぽんぽん | 2010年11月10日 (水) 11時02分

ふみこ 様

私も 「眠る」事が 大好きでした。(今もです)
子供のころ 布団を敷いて 
その中にもぐりこむ瞬間
 嬉しくって「きゃ~」とよく
声をあげて  母に「変な子だね~」と言われたものです。
高校時代 授業中 眠くて 眠くて
「今ここで 眠っても良い」と言われたら
どんなに幸せだろうと ず~~っと考えていたので
成績は 芳しくありませんでした。


たくさん眠ると言うことが
「一度動きをとめて、つぎのことにそなえる」
そう言うことだと 思えたら なんだか
嬉しくなりますね。

よし!明日のために しっかり眠ろう!
でも 私の場合 たくさん眠ると その分たくさん夢を見て
しまうんです。

追伸・・・・元カレー専用の木杓子の利用法、この使い方!さすがです。


投稿: えぞももんが | 2010年11月10日 (水) 05時44分

ゆるりんりんさん

眠るというのは、
とても……すばらしくて、ありがたいことですね。

「趣味」を尋ねられるたび、
「眠ること」と答えたくなります。

眠りはときどき、どこか不思議なところと
つながっています。

夢で遭いましょう。ねえ。

投稿: ふ | 2010年11月10日 (水) 05時40分

寧楽さん

お嬢さんのひとこと、たのもしいですね。
子どもたちは、
わたしが同じ年頃だったときよりも、
自然でいいなあ、と、
思います。

自分は、自分のままで生きていこう、
なんてね、ほら、わたしはまた、
いろんなところに力が入ります。
が、そのことは、大事にしていたいな、と。
自分を認めてやりたいです。

投稿: ふ | 2010年11月10日 (水) 05時38分

しょうさん

おかしな「無理」、「力み」を
前提に生きているようなところが
わたしにはあって、ときどき、
立ち止まっては、ため息をついています。

しょうさんに、
「ひとは、ほんとうに、ひとりひとり
違うから……」
と云っていただいたことが、
どんなにわたしのこころを明るくしたことか。

お礼を云わせてください。
どうもありがとうございます。

佳いきょうを。

投稿: ふ | 2010年11月10日 (水) 05時34分

ふみこ様

眠いときは本当に眠い。
チャージのひと時
思いっきり寝ましょう。
眠りがくれる幸福感大好き。

子供たちが受験生だったころ
「この家では勉強する気がおきないから
学校行ってくる」
そう言って図書館へ子供たちは行きました。

そうでしょう、
だって家中に
ねむねむ菌をばらまいていますから。
皆よく寝るので
大きく育っています。
(わたしは育ちすぎていますが・・・)

投稿: ゆるりんりん | 2010年11月 9日 (火) 19時57分

ふみこさま

ふふふっ。
ふみこさんの本領発揮
ですねぇ。

新たな出番が楽しいです
持ち場ができて
本棚で目覚めたんですね

「やっと、自分の周りが見えてきた」と
つい最近、娘が言いました。

悩める?高2女子!
母は密かに、いいぞ♪
と微笑でいます。

投稿: 寧楽 | 2010年11月 9日 (火) 16時18分

どりすさん

いらっしゃいませ。
なんだか、とてもとてもうれしいです。

タイミングのわるさでは、
負けません(何をえばっているのだか)。

でも、タイミングより何より、
好きなようにやらせてもらう、
生きたいように生きる、
そういう風にいきましょうね。
……お互い。

佳い11月を。

そして、またおたよりを待っています。
どうもありがとうございました。

投稿: ふ | 2010年11月 9日 (火) 15時49分

ふみこさま、みなさま

人間は本当にひとりひとり違うから、他人が軽々できて自分ができない、ということはあたりまえなんですが、若いときは体力があるからか無理したり、落ち込んだりしますよね。年月をかけて自分の取り扱い説明書を探すというか、自分を受け入れていきたいです。

そういうことを「あきらめ」「開き直り」って言ってしまうと悲しいので、受け入れる、受け止める、って良いとらえ方だなーって嬉しくなりました。

今週もありがとうございます!

投稿: しょう | 2010年11月 9日 (火) 15時44分

ふみこさま
 はじめて書き込みいたします。
 エッセイや こちらのブログを読みながら
時折あまりの納得に つい声まで出して怪しげに楽しませていただいています。
 「それぞれの生き方」と悟れる時がくれば、のびのび暮らせますね。
 私はイヤな予感は人一倍早く感じるくせに、タイミングの悪い子供時代を過ごしていました。
 あ、今もそうですが^^
 ふみこさまの(うちの母と同じお名前なので、ちょっと照れます)工夫と申しますか、采配には、いつも目のウロコがポロポロ状態です。
 この木杓子の転職や、掃除機に名前をつけて良い関係に導いたり・・・
 今日のような木枯らしの中でも 心ほっこりするエッセイを
いつもありがとうございます。
 
 
  

投稿: どりす | 2010年11月 9日 (火) 13時19分

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