日日のしおり…4月8日(金)~10日(日)
4月8日(金)
昨夜、23時半ごろ、また揺れた。
(東日本大震災の)余震……?
もう床について眠っていたが、揺れるなり目が覚めて、覚めるなりうろたえた。ここが揺れるのはかまわない。けれど、もう、東北地方と北関東は揺らさないでほしい。……と思ってうろたえたのである。揺れは、こちらで引き受けさせてください、と祈りながら、闇のなかでじっとしていた。
けれど今朝、昨夜の揺れは宮城県で震度6強、震源地は宮城県牡鹿半島の東だと知った。今朝未明時点で、青森、岩手、秋田県の全域と、宮城、山形県の一部で停電しているらしい。先の地震で倒壊しかけた建物に、昨夜の揺れは、さらに打撃を加えた。
かすかな揺れでも、彼の地の人びとにとって、それはどれほどの恐怖だろうか。自らを励まして立ち上がろうとしているこころを、どれほどがっかりさせただろうか。どうか、昨夜の分の睡眠をどこかでとりもどして、そして……、小さなやすらぎをみつけて……。
さあ、わたしは仕事だ。
このところ気がつくとこころが虚ろなものに占拠されている。虚ろは、今朝、さらにひろがっているけれど、なんとか踏みとどまっているのは、休まず書いているからだ。日常のルーティンワークをつづけているからだ。
朝方、友人夫妻から電話。
届けたいものがある、と云う。はて、何だろう、と思いながら、待つともなく待っている。
あたまのなかに、明るいふたりの顔をならべたら、地震のあと、会うのは初めてだと気づく。
そうして、ふたりは来てくれた。あふれるように花をつけた桜の枝を抱えて。庭の桜を切ってくれたのだ。これを届けてくれようとした思いは、ことしの春の思いである。夫妻とわたしたち夫婦の4人、男同士女同士てんでに話しながら、ひと月前のお互いとはちがうお互いになったことをたしかめ合っている。
桜の枝を抱くと、湧く。つぎの春、つぎのつぎの春、つぎのつぎのつぎの……。
4月9日(土)
このごろ、生姜に凝っている。
生姜すろうか、刻もうか、という台所での思案のほかにも、紅茶に生姜汁を加えたり、すりおろした生姜をさらしの袋に入れて湯船に沈めたり。
冬のあいだは少しも寒さを感じなかった。冬といえばこんなものだろうと思っていたし、からだを動かせばすぐ、からだはぽかぽかとあたたまった。腰だけは冷やさないようにしているが、わたしはかなり薄着だ。起きだしてきた家の者たちに「お母さん、きょう、寒い?」と聞かれる朝でも、半袖でいたりするので、「あ、いい、いい。そんな恰好のひとに気温のことを聞いてもはじまらないや」と、云われる。
配達のひとに呼ばれ、家の前に出てゆくときも、ぎょっとされることがある。「寒」という顔。それで、パーカーを腰に巻いておくことにした。外から呼ばれたら、急いでそれをはおって出る。腰のパーカーは、わたしの唯一の世間体かもしれない。
それが、どうだろう。
ことし、春がやってきたと思った途端、寒さを感じた。暖房器具を早ばやと片してしまったからでもあるだろうが、なんだか、やけに冷えるのだ。いろいろ考えて、生姜を思いついたというわけだった。
何かにすがりたかったのかな、とも思う。
□生姜ごはん〈2人分〉
米(いつもの水加減をしておく)……………………1カップと半分
生姜………………………………………………………1片
酒…………………………………………………………大さじ1
しょうゆ…………………………………………………大さじ1
昆布………………………………………………………10cm1枚
①生姜の皮をむき、薄切りしてそれをせん切りにする。
②米の水加減から、水を大さじ2減らし(加える酒としょうゆの分)、そこに
酒としょうゆ、昆布を入れてひと混ぜする。
③②に、①をのせて、ご飯を炊く。
④米が炊きあがったら、ぬらしたしゃもじで大きく混ぜる。
※生姜の量は、好みでふやします。上記の生姜は、子どもの口にもやさしい
分量です。
※生姜の甘酢漬けをみじん切りにして、炊きあがったご飯に混ぜこむ生姜ご飯も、おいしいです。
4月10日(日)
朝のうちに、うちで選挙権のある4人でぞろぞろ投票へ。
投票所になっている小学校の校庭では、子どもたちがそろいのユニフォームを着て、野球の練習試合をしている。子どもたちの運動の風景に、しばし立ちどまって見入る。目の前の小さいひとたちのこころも、ひと月あまり前の出来事、その日からきょうまでのことを受けとめているにちがいない。感性を耕して、知恵深くあたたかい大人になっておくれね。
(わたしも耕し耕して、知恵深くあたたかいおばあさんになる。約束ね)。
ことしの春の、思い。
ことしの春の、さくら。
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コメント
ももさん
応援の気持ちや、
何かしたいというこころや、
「硬い地盤が押し合いへし合い揺れるのなら、
全部溶けて一緒になっちゃえばいいのに」という考えや。
そんなやさしいがんばりで、
そうとうにくたびれてもおられるのだと思います。
ほんとうにそうしてください。
ゆっくりお休みください。
そして元気になって、また、やさしさを蒔いてください。
「花さかももさん」になってください。
お大事に。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月12日 (火) 15時22分
かっちゃんさん
お気持ちよくわかります。
いえ……、
わかるつもりでいます。
へこんだり、「ごめんなさい」と思ったりの、
くり返しです、わたしも。
けれど、これまで、
知らない誰かのことを思ってへこんだり、
申しわけないという気持ちになるようなこと、
滅多になかったので、それも変化だなあと
感じています。
やさしい気持ちを寄せてくださり、
ありがとうございます。
ほんとうに。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月12日 (火) 15時16分
ふみこさま、みなさま
また…、地震…、でしたね…。関東まで…。
ここのところ、また頻回に揺れて…。
ちょっとの揺れでも怖い私は、本当に想像するだけでも…。
ことばがありません。
桜、本当に素敵です。
北海道は、もう少しあとのお楽しみみたいですが、
ビニールハウスのが咲きました!とニュースで見ました。
春の暖かさとともに、いろんなことが溶けてくれるといいなぁと思います。
何か硬い地盤が押し合いへし合いして揺れるのなら、
全部溶けて一緒になっちゃえばいいのに!くらい思ったり…。
生姜ごはん。
さっそく作ろうと思います。
ここのところ「ゆっくり」と気をつけて過ごしていたら、
体調を大きく崩しました。
治ったと思ったら、また高熱が…。
こんなに熱が上がったり下がったりするなんて何年ぶりだろう?と思いながら、
これは、ご褒美に違いない!休まなくてはと言い聞かせています。
体がゆるみすぎて、菌にやられたのかもしれません(笑)
なにかを丁寧に作りたかったので、生姜ごはんのレシピがうれしかったです。
今日も、ありがとうございます。
では、また…
投稿: もも | 2011年4月12日 (火) 15時10分
ふみこさま、みなさま、おはようございます。
昨日私がつまらない妄想を書きこんでいる間に
またま大きな余震があったとのこと・・・。
ばかな妄想をあれこれ頭にうかべられる私は、被災地の方に
心を寄せているつもりでも、なんてのんきなんだろうと
朝からちょっとへこんでいます・・。
被災地のみなさんの恐怖やお疲れは、私のように変わりない
生活を送っている者にはとうていはかりしれないほどのものだと
思います。
うまく言葉にできませんが、ごめんなさいの気持ちでいっぱいです。
投稿: かっちゃん | 2011年4月12日 (火) 10時42分
仙台のじゅんこ さん
3月11日からの日日のなか、
わたしのなかで、
ますます「持ちたくない」気持ちが募っています。
備蓄どころか、減らす努力をまた、
はじめているのです。
わたしという生きものの、これは、つよい感覚なんだと
思います。
何をどう感じているのか、よくわからないのですが。
元気でいましょう。
お互いに。
約束です。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月12日 (火) 10時26分
たろじろさん
仕事は変わっても、
わたしたちには、朝起きたときから
床につくまで(夢みる時間も、そのうちか……)、
たくさんのルーティンをもっています。
そのことの愛おしさのなかで、
未来に向かっていけるような気がしています。
一歩一歩というのは、そういうことだな、と。
たろじろさんの「未来」も、「つぎ」も、
もうはじまっています。ね。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月12日 (火) 10時23分
仙台のじゅんこ様
はい!わかりました。
受け身上手…なるほど。
具体的な助言をありがとうございます。
じゅんこ様も子供達とパワーを交流させて、お互いに元気があふれますように…
私の元気と見守りの気持ちも一緒に連れてっていただけたら嬉しいな。
二週間、それを私の生活のひとつの目当てにしてもいいでしょうか。
投稿: ぽんぽん | 2011年4月12日 (火) 09時53分
ふみこさま 皆さま 大丈夫ですか?
たとえ「余震」で揺れなくても、気持ちが揺さぶられる毎日。でも自分だけがつらいんじゃない。必ず終わりは来る!と自分に言い聞かせています。
皆さん とにかく揺れても被害が少ないように、家具や食器、本の置き場所を見直してください。少なくとも一年はその状態をキープする覚悟で。
備蓄は大事です。だけど、家の中がメチャメチャになった時の打撃を少しでも軽くしておくことをおすすめします。
「ふみこさんち」をイメージしてください!
今日から2週間、新一年生の下校見守りをします。大人が怯えてる場合じゃない。子供達を守らないと!…なぁんて言いながら、実は子供達にパワーを分けてもらいに行くんですけどね(^^)
「受け身」じゃ怖いだけ。ちゃんと備えて「覚悟」して迎え撃つ!ほんとは戦いたくないのにな…「受け身」上手になりたいものです。
投稿: 仙台のじゅんこ | 2011年4月12日 (火) 09時19分
ふみこさま、こんばんは。
通い慣れた場所を離れたので、ルーティンワークがすっぽりなくなってしまいました。
朝、目覚めた時から時間に追われる生活から解放されたのに、今は時間を持て余してしまっています。
全て自由と言われると、かえって自由に動けなくなるものですね。
とは言うものの、やる事は山積み。
とりあえず、歩き始めないと。
投票日、満開の桜の下で、走り続ける子ども達を見て、負けてられないな、と思いました。
さあて、行ってみるか。
投稿: たろじろ | 2011年4月11日 (月) 23時50分
かっちゃんさん
またまた、
「元気」をありがとう!ございます。
ドラえもんが、アンパンマンをね。
それも、ありですよね。
あり得ないつながりが、働く……。
ウルトラマンの皆さんも、ぞろりと
お出ましいただきましょうか。
3分ずつ……。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時58分
寧楽さん
ほっとしました。
寧楽さんの、いつもと変わらぬ
落ちついたぬくもりのある「おたより」。
いつもと変わらぬ……は、
いま、かけがえのないものに思えます。
ありがとうございました。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時55分
ゆるりんりんさん
そうなんです!
わたしが見たいもの。
みんなの「笑顔」。
ことに、東北地方、北関東の皆さんの
「笑顔」。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時54分
Kouji さん
ブランコ。
Kouji さんのおたよりを読みながら、
漕ぎましたねえ、思わず。
すごくすごく漕げる子どもだったのです。
あのときみたいに、ぐーんぐーんと、
勇気をだしたいなあ。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時52分
どりすさん
お母さまは、
素敵な、ちっちゃいお友だちを
もっておられるんですねえ。
このお話には、
さすがに、心身がゆるみました。
ありがたかったです。
ありがとうございます。
こんなふうに彼の地の人びとも、
ゆるませることができたなら……。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時50分
しょうさん
ともに泣く。
わたしも泣きました。
けれど、
いつか、仙台においしいものを食べにゆこうという
夢も抱きました。
泣きながら、夢。
ともに泣きながら、絆。
ふ
投稿: ふ | 2011年4月11日 (月) 18時46分
ふみこさま、みなさま、こんにちは。
先日の余震・・・余震と書くのに違和感があるほどの大きな揺れ・・。
ああそうか、余震って小さい意味じゃないいんだと、今さら気づく私です。
新聞に「心が折れそうです」と話されていた方の記事が載っていて、
そしてしょうさんが書かれていた「なんだかもうやりきれなくなっちゃって…。」
の、やりきれないお気持ちを読ませていただいて・・・。
私がどらえもんなら「やりきれない気持ちをぱくぱく食べてくれるアンパンマン」
を出すのになぁ~とあほなことを考えてしまいました。
やりきれない気持ちを食べたアンパンマンの顔がどんどん大きくなって
おなかをすかしている人や寂しい気持ちの人に顔を食べさせてあげるんです。
食べた人は元気百倍、小さくなったアンパンマンの顔はやりきれない気持ちを
どんどん食べるので、メルモちゃんのキャンディ(みなさん、知ってますか?)
みたいに、すぐにもとどおり!!
はぁ~はてしなく続く妄想の世界・・・。
すみません、あほなこと書いちゃって・・・。
今年の桜はなんだか、「特別の特別」 ですね。
投稿: かっちゃん | 2011年4月11日 (月) 17時19分
ふみこさま
今日、いつものしだれ桜のもとで祈りました。
桜の精霊に届くように。
ふみこさんのところに届いた桜も綺麗ですね。
心遣いのお友達も素敵です。
生姜ごはん、茗荷ごはん、好きです!
投稿: 寧楽 | 2011年4月11日 (月) 17時17分
ふみこ様
なんてきれいなんだろう!
この桜を届けられたご夫妻のいろいろな、
でも暖かい思いが伝わってきます。
この桜さんに今お願いをした。
桜のテレパシーで被災地の桜に言ってほしい。
桜さんたち
あなたたちの美しさで
心にかかえている全てのことを
一瞬でもいいから消して、
ほほえみをよみがえらせて
投稿: ゆるりんりん | 2011年4月11日 (月) 16時54分
ふみこさま、みなさま、こんにちは。
選挙といえば、ふみこさんの選挙区は全国から注目されていましたね。結果は驚きというか、ため息というか。…
きょう、葉桜の目立ちはじめた公園でうん十年かぶりにブランコを漕ぎました。脚がしんどくなりました。
でもはなびらの舞うなか、桜の木や青空をみながら前へ後ろへぐんぐんゆれていると、胸のうちもなにかうごいてゆくようなかんじでした。
「目の前の小さいひとたちのこころも、ひと月あまり前の出来事、その日からきょうまでのことを受けとめているにちがいない。感性を耕して、知恵深くあたたかい大人になっておくれね。」
年齢的にはとうに大人になっている自分もまた、ほんとうの意味でそういう大人になりたいとおもいました。
投稿: Kouji | 2011年4月11日 (月) 14時36分
ふみこさま、みなさま、こんにちは。
今朝、母の家の玄関に、桜の一枝がペットボトルに入れて
置いてありました。
誰だろう?
と、いろんな顔をめぐらせていたのですが、
そのイキなお方は、近所のやんちゃ小学生。
母の井戸端友達の一人です。
「おじいちゃん(仏壇の)にも見せてあげたい」・・・母のつぶやきを
かなえてくれたようです。
余震の情報を目にするたびに「頼む、頼むから、もう静まってよ!」
と、お腹の底から、時に、声に出して願います。
満開の桜を抱えた隣の神社には、この春、宴の姿は見えませんが、
ガラロン、ガラロンと大きな鈴の音を立て、祈る人の姿が目につきます。
花冷えの日もあります。
生姜は冷えのお守りですね。
しょうさんがおっしゃるように、涙や我慢を ともに吐き出したら、
身体を温めて、力をつけて。
ぬくもりは、心にも身体にも1番効きますね。
ことしの春のさくらは、たくさんの人の心に響いているんでしょうね。
投稿: どりす | 2011年4月11日 (月) 13時17分
ふみこさま、みなさま
こんにちは。
実は私、飲食店に関係する仕事をしているんですが、
仙台にも関係している店舗がありまして、みんな、
なんとか営業再開しようってがんばってたんですね。
あの夜の大きな余震。
新しく買いそろえたお皿もグラスもお酒も、修理した厨房器具も、
またほとんど全部だめになっちゃったんです。
店長たちと電話で話しをして、震える声を聞いていたら、
なんだかもうやりきれなくなっちゃって…。
で、ずっともやもやしてる気持ちを抱えてたら、
友人から「ともに泣けばいい」って
言われて、そしたら、もうわんわん泣いてしまいました。
わんわん泣きながらご飯をいっぱい食べました。
ああ、私泣きたかったんだって、びっくりしました。
あの日以来、「辛いのは当事者の方なんだ、私は泣いちゃいけない」
「泣く暇があったら、できることをやらなくちゃいけない」って、
こらえていたのが一気にふきだしたかんじでした。
泣いたらすっきりして、「あーがんばらなきゃ」っていう気持ちになれました。
ともに泣くこと、ともに生きることが、大前提だって友人は教えてくれたんです。
もしわたしとおんなじ気持ちで過ごしていて、すごく無力感にとらわれてしまった方がいたら、我慢せずに泣いてみてください、っていいたいです。
投稿: しょう | 2011年4月11日 (月) 13時01分