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2007年7月20日 (金)

長~い時間の旅路の果て、いま私と暮す家具たち

私がいま住んでいるのは、友人のダーリーン&ヨース夫妻が所有するメゾネットの2階(4月27日『床そうじ』の回、参照)。西海岸オレゴン州からニューヨークに戻ってきたとき、とりあえず・・・のつもりで入居し、そのまま住みついてしまいました。

居心地よい理由のひとつは、この部屋の家具たち。
ビターチョコレート色の大きな本棚には、プルーストやディケンズの名作、イタリアの現代文学など面白そうな本がいっぱい(学者肌のふたり、蔵書数はハンパじゃありません。彼らがこの家に引っ越した当初は、本の重さで床が抜けないかと心配していたほど)。

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本棚にはマルセル・プルースト、ジャコメッティ、セリーヌ・・・20世紀初頭に活躍した作家や芸術家の伝記がズラリ。

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私は本棚の半分を飾り棚として使用。大好きなヒト&ねこたちの写真、香水瓶、アクセサリー入れなどなどを収納。

「好きに使って」と空のまま残してくれた本棚には、大好きな写真集や絵本、香水瓶を置きました。本棚の隣の衣装だんすは、上がゆるい曲線を描いてアールデコ風。なんだか「古びているけれど縫製のしっかりしたレースのブラウスを着て、シャンと背をのばしたご婦人」を想像してしまいます。

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大好きな写真集も! 19世紀末パリの写真家ウージェーヌ・アジェやジャック・アンリ・ラルティーグ、1930年代のパリを撮ったブラッサイ・・・ページを開けば、たちまち時間旅行。

古びた木製の机は部分的に明るい空色に塗ってあって、「どこか遠い国の寄宿学校」にありそうな雰囲気。
それに! 机で使っている椅子ときたら・・・
上は「ふつう」の古びた木の椅子。でも細かな彫刻が施してあって、作った人の思いが伝わってきます。何よりもユニークなのは、脚ごと台車にのっかっていること。手彫りの「ブレーキ」までついているんですよ!


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ヨーロッパの寄宿舎にありそうな古びた木の机は、明るい空色がポイント。

みなさんは、「なぜかわからないけれど好きな種類の家具」ってありますか? 私は昔から、どういうわけか椅子が好き。お尻はひとつしかないからたくさん持っていてもしょうがないのに、蚤の市やアンティークショップで椅子に出会うとついしげしげ眺めてしまいます。動物のような四本の脚。凛とした背もたれ。優しくカーブを描いた肘掛け。この世に誕生を受けてからこの椅子は何を見、どんな人たちを抱きとめ、どんな言葉を聞いてきたんだろう? なんて、そっと聞いてみたくなるのです。

台車つきの椅子は、ダーリーン夫妻が友だちから無期限に預かっているもの。その友だちは「うちではいらないから」と置いていったそうです。脚の不自由な人のために家族の誰かが手作りしたものなんだろうか、なんて想像しています。


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(きっと)誰かが大切な人のために作った“車椅子”。ふだんなにげなく使いつつ、優しさのお裾分けをもらっている気になるのです。

そして、しかし、驚くべきことに――この椅子を例外として、上記に挙げた家具はみんなダーリーン&ヨースが路上で見つけたものなんです! 

日本には「一期一会」という素敵な言葉がありますね。人との出会いも、モノとの出会いも、見えない素敵な偶然に導かれているのかもしれません。なーんて考えてしまうほど、ダーリーン&ヨース夫妻が素敵な家具に出会う確率ってすごいんです。彼らはそれをサラ~リと受け止め、「路上ブティックで掘り出し物見つけたわ!」なんて言ってますが。

ニューヨーカーは案外気軽に、この“路上ブティック”を活用しています。先日は大学教授兼不動産業者、美しくセンスも抜群という女性の家を訪ねたのですが、リビングに置いてあった素敵なランプを褒めると「あら、道端で拾ったのよ」と得意満面に教えてくれました。

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これも“路上ブティック”で見つけた、という驚きの衣装だんす。

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    開くとこうなってます。

「どうぞご自由に」と暗黙のメッセージをこめて路上に置いてある家具をもらってくる、そんな“路上ブティック”活用者もいれば、もっと積極的に掘り出し物ハントに出かける“路上ブティック”活用者もいます。ニューヨークにはときどき路上に大きなコンテナ型資源ゴミ入れ「ダンプスター」が置いてあるのですが、『ニューヨークタイムズ』紙(2007年6月21日付)によると、お金持ちの住んでいる地域のダンプスターを定期的にチェックし、面白いもの、良いコンディションのものを無料で見つけることにスリルを見いだす“フリーガン”なる人々もいるのだとか。ゲーム感覚、あるいは新しい時代の狩猟民族? ある意味では究極のロハス的生活と、いえるかもしれません・・・

 

★次回の更新は7月27日(金)です! 

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コメント

以前投稿させていただきました。葉さん、ニュースを見たのですがニューヨークでの爆発びっくりしました。大丈夫でしたか?
本棚の半分を飾り棚として使うって素敵ですね。私も真似したいです。以前に低い棚をつなげてドレッサーとして使っていた事がありまして、その時は自分で作ったという事もあり、高価な物ではないですがお気に入りでした。路上ブティックも、日本ではあまりない事だと思いますのでうらやましいです。昨日図書館でアーウィン・ショーの文庫とニューヨークの小説を借りてきましたので今からニューヨークにうっとりしようと思います。葉さんのおすすめなニューヨーク関連の小説とかを今度紹介していただけたら嬉しいです。

こんにちは。以前投稿させていただき、お返事いただけてすごく嬉しくて、また投稿させていただきました。葉さん、ニュースを見たのですがニューヨークでの爆発びっくりしました。大丈夫でしたか?
本棚の半分を飾り棚として使うって素敵ですね。私も真似したいです。以前に低い棚をつなげてドレッサーとして使っていた事がありまして、その時は自分で作ったという事もあり、高価な物ではないですがお気に入りでした。路上ブティックも、日本ではあまりない事だと思いますのでうらやましいです。昨日図書館でアーウィン・ショーの文庫とニューヨークの小説を借りてきましたので今からニューヨークにうっとりしようと思います。葉さんのおすすめなニューヨーク関連の小説とかを今度紹介していただけたら嬉しいです。

おはんさん、こんにちは〜
ご心配くださりありがとうございます! 事件の2時間ほど前にスチーム管爆発現場の近所にいたので、後で事件について知りびっくりしました。ニューヨークの地下は古いトンネルやパイプが蜘蛛の巣状にはりめぐらされていて、市当局も完全には把握しきれないほどすごいことになっているらしいです。新潟の地震、英国&ウェールズを襲った洪水・・・どこで何があるか、本当にわからないこのごろですね。

アーウィン・ショーといえば『夏服を着た女たち』。先日読み返したら、以前読んだときよりも切なくて、泣いてしまいました・・・ニューヨーク関連の小説や本、こんど取り上げてみたいと思います♪  また遊びにいらしてくださいね!!

あと、エントリー違うけど(読んでくださるかな、これ?) 庭ふくろうさん、カナダのおいしいもの事情ありがとうございました。coho サーモン、そういえばオレゴンに住んでいたときよく名前を聞いたのを思い出しました。コメントを読んで、メープルシロップたっぷりのパンケーキが食べたくてたまらなくなってしまいました。あう〜

おはんさん、こんにちは〜
ご心配くださりありがとうございます! 事件の2時間ほど前にスチーム管爆発現場の近所にいたので、後で事件について知りびっくりしました。ニューヨークの地下は古いトンネルやパイプが蜘蛛の巣状にはりめぐらされていて、市当局も完全には把握しきれないほどすごいことになっているらしいです。新潟の地震、英国&ウェールズを襲った洪水・・・どこで何があるか、本当にわからないこのごろですね。

アーウィン・ショーといえば『夏服を着た女たち』。先日読み返したら、以前読んだときよりも切なくて、泣いてしまいました・・・ニューヨーク関連の小説や本、こんど取り上げてみたいと思います♪  また遊びにいらしてくださいね!!

あと、エントリー違うけど(読んでくださるかな、これ?) 庭ふくろうさん、カナダのおいしいもの事情ありがとうございました。coho サーモン、そういえばオレゴンに住んでいたときよく名前を聞いたのを思い出しました。コメントを読んで、メープルシロップたっぷりのパンケーキが食べたくてたまらなくなってしまいました。あう〜

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プロフィール

渡辺葉
渡辺 葉(わたなべ よう)
翻訳家・エッセイスト。慶応大学卒業後、カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校への留学を経て女優を志す。95年からニューヨークで暮らし始め、舞台女優として活動。現在はエッセイの執筆や料理本の翻訳などを手がける。料理とダンスが大好きな、好奇心旺盛な女性です。
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