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2007年10月

2007年10月26日 (金)

NYにやってきた「あの人」と、買い物&料理&ホームパーティー

ニューヨークには所々、同郷の人々が集まって住む“エスニック村”みたいなエリアがあります。今回は日本からさるスペシャル・ゲストをお迎えしたので、イタリア人街まで足をのばしてみました。
リトル・イタリーというと普通はマンハッタンの南にある一隅を指すのだけれど、このごろは隣のチャイナタウンに押され、年々縮んでゆくばかり。でもマンハッタンの北にあるブロンクス地区にはまだ、イタリア系移民の暮らしに根づいたもうひとつのリトル・イタリーがあるのです。

まずは地下鉄に乗り、マンハッタンをずずいーっと北上。ブロンクス地区に入ると高架線になり、モノレール気分!? バスに乗り換えて数分、さらに歩いて数分。レンガ造りの住宅街を入ってしばらくいくと、商店街が見えてきました。

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地下鉄+バスと乗り継ぎ、テクテクと歩いていくと・・・こんなお城のような建物もありました。今はカーペット屋さんのようだけれど、昔はいったい・・・?

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建物の壁にバーンと「リトルイタリーへようこそ♪」の文字が。住民の誇りを感じますね

角の乾物屋(?)さんでは、木の箱いっぱいの生オリーブを売っています。これ、自分で漬けるためなのかな? 初夏になると梅干用の梅を売り出す、あの風景を思い出しますねー。隣の肉屋さんでは鶏や牛に並んでなにやら白いものが。
「なぜここに、イカが?」
と訝しく思い、よく見ると・・・そっか! トリッパ、いわゆる「はちのす(※1)」でした。でもこの白さはやっぱりイカに見えてしまう。大きな塊肉がドーンとぶらさがっているあたり、昔ながらの肉屋さんという雰囲気。

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生オリーブは1パウンドが1ドル69セント。つまり、100グラム50円以下!? 安っ、というだけで買ってみたくなるこの心理はいかがなものか。

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ドーンとダイナミックな肉屋の店先。ケースの右端にあるのが、問題のイカ。

数軒先にある「中央小売市場」にずんずん入ってゆきます。茶色の大きな葉っぱにタバコを巻き込んで店頭で葉巻を作っている店があったのですが、マフィア風迫力顔のおにいさんに臆してしまい、写真撮れませんでした・・・。樽をいくつも並べ、マリネしたオリーブを売っている店や、イタリア産のジャム、お茶、袋入りのビスコッティを売っている店も。しかしわたしたちは一路、市場の奥を目指す。

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アーサー・アベニュー中央小売市場にて。平日の昼間なのですが、ひとりで仕入れに来ている男性も。何作るのかな

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途中のお惣菜屋さんもけっこういい感じです。マリネしたイワシ、サバの油漬け・・・

それはこの市場で(というか、この界隈で)いちばん有名な店、「マイクス・デリ」。マイクというのはここの店主ミケーレ(※2)さんのアメリカ風呼び名なのですが、まあちょっとクリックしてみてください・・・イタリアン・ダンディなお父さんでしょ? 
カウンターの中、そして上にズラ~リと並ぶ生ハム、サラミ、ソーセージ。なんでも試食させてくれるので、詰め物をしたペッパーを試してみました。大きなシシトウみたいな酢漬けペッパーの中には、生ハムにくるまれた棒状のチーズ。一口の中にいろんな味が潜んでいて、楽しいたのしい。
われらがスペシャル・ゲストはサンドライド・トマトを試食しています。しょっぱくてゴム製の靴底みたいな食感のサンドライド・トマトも多いけれど、ここのは柔らかく、トマトをほうばりながらも「んむん!」と満足のため息をもらしてしまうほどフレッシュな風味なのです。

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この界隈でいちばん有名な店、マイクス・デリ。お惣菜の量り売りだけでなく、ハムやチーズをたっぷり挟んだサンドイッチも人気。

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アーサー・アベニューの名物男、マイク(ミケーレ)さん。「俺と一緒にワイン飲んでくか?」と誘いつつ、ウインクで決めっ。

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パルマ産の生ハム。これも試食しちゃいました。自然な甘みと芳香が、んんんたまりません

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オリーブや野菜のピクルス、ナスを炒め煮した「カボナータ」も。

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本日は生ハムとチーズを詰めたペッパー、ツナ?を詰めたペッパー、サン・ドライド・トマトその他を購入

さて、この辺で謎のスペシャル・ゲストの素性を明かしましょうか。タラララ・・・ジャーン♪ オレンジページの人気ブログ、「日めくりスパゲティ」の著者ミヤカワ嬢です! 忙しいスケジュールを縫ってニューヨークに遊びに来たミヤカワ嬢&彼女を紹介してくれた友だち「つっこ」さんこと、ちほにゃむんの3人で、イタリア食材を仕入れて味見会、という企画なのでありました。

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本日の前菜です。マンジャ、マ~ンジャ、食べなはれ♪

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いつも「日めくりスパゲティ」でおいしいスパゲティ開発に余念のないミヤカワ嬢。パパパッと数分で、本日のパスタできあがり!!

マイクさんのデリで作りたてのモッツァレッラ・チーズ、生ハム、アーティチョーク(※3)などを仕入れ、隣のベーカリーでしっとりしたアーモンド風味のクッキーを仕入れ、それから生パスタのお店でパスタを仕入れ・・・ほくほくした気分で家路についた私たち。買ってきた前菜をつまみつつイタリア産ワインで乾杯。そしてミヤカワ嬢の鮮やかな手さばきにて、あっというまにパスタ2種が登場! いやいや、おいしかったのなんの! どんなパスタを食べたかって? それはミヤカワ嬢に語っていただきましょう、どぞっ
楽しき友、美味し酒、美味し麺。なーんて、飲食業界の宣伝文句みたいですが・・・友だちと食材調達&味見会っていいものですね!

(※1) 牛の第二胃のこと。そういえば日本のイタリア料理店でトマト入りの煮込みを食べたことがあります。“ふちふち”した食感(?)で美味しかった。
(※2)ついでに、ウェブサイトの「About Us」をクリックしてみてください。ちょっとスクロールすると、ミケーレ父さんの若き日のお姿が。「わずか100ドルとスーツケーツひとつ、そして端麗な容姿だけをたずさえて、故郷カラブリア地方からニューヨークに渡った」そうな。男前ぶりはいまも変わりません!?(※3)和名はチョウセンアザミ。巨大な蕾を茹でるか蒸すかして食べます。まずはガクの下1/3部分についた柔らかい部分をこそげるようにして食べ、花心のケバケバ(チョークと呼ばれる。ちなみに“息が詰まる”という意味の動詞と同じスペル!)を取り除いて、芯の部分も食べます。ちょっと面倒くさいけど、アスパラガスに似た独特の風味でおいしい! 芯のところだけマリネした瓶詰も売っています。

 

★次回の更新は11月2日(金)です! 

2007年10月19日 (金)

巡りゆく季節を感じる場所、ファーマーズマーケット

十月に入ってもなにかと暖かな日々が続いていたニューヨークですが、先週あたりからピキッと空気が冷たくなってきました。
サンダルをしまってブーツを履いたり、(まだちょっと早いかなぁ)なんて思いながら手袋を出してみたり。太陽に会える時間が減っていくのはちょっと心寂しいけれど、「巡りくる季節を迎えるためのしたく」に気持ちのどこかがワクワクしているこのごろです。

季節のめぐりに喜びを感じるのは、やはり四季(梅雨を入れると五季、とも聞いたことがあります)のはっきりしている日本で育ったせいなのかしら。
むかーし昔、北カリフォルニアのサンタクルーズに留学していたことがあります。海のそばで夕焼けがきれいないい街だったのですが・・・季節がほぼ、ふたつしかないのです。夏は乾期で、草に覆われた丘が茶色く乾いてしまう。しかも沖合を流れる寒流の影響でいまいち温度が上がらず、はりきって夏ワンピを着たのに肌寒くて鳥肌が立ってしまい「北半球なのにさ・・・」と納得できない思いをかみしめたことも。冬は雨期でしとしと雨が続き、地元の名物バナナなめくじ(大きい画像です。ご注意を!)に遭遇できます。「あら、こんなところにバナナが」と拾おうとすると、ニュル~。ギャーッ!
同じ西海岸でも、カリフォルニア州の北隣にあたるオレゴン州では四季があったので、あれは地形によるものだったのかしらん?

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たとえば春。グレイだった街並みにぱっと広がる色彩の海に、ニューヨーカーたちは目を奪われ、思わず足を止める・・・

幸い、ニューヨークは季節の移り変わりが比較的はっきりしています。それを確かめ、(おいしく)味わうには、ファーマーズマーケットをのぞいてみるのがいちばん!
ファーマーズマーケットとはその名の通り、近郊の農家が集まる「産直市場」。屋外で行われることが多いので「青空市場」とも呼べますね。ニューヨークでは1976年にはじめてのファーマーズマーケット(※1)が登場し、いまでは異なる曜日に市内のあちこちで開かれています。ファーマーズマーケットの魅力は、近郊農家&生産者から穫れたて、作りたてを買えるということ。見慣れない食材のおいしい調理法とか、それぞれの食材にあった保存法も教えてくれます。ものによってはスーパーの半値以下ということもあって、新鮮&楽しい&安い、といいことづくし♪ 

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あるいは夏。太陽をいっぱいに浴びて甘いピーチ、しゃきしゃきのキュウリ・・・

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もっとピーチ。もっともっとピーチ!

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ナスやスクワッシュ(瓜科の野菜。ズッキーニもスクワッシュのひとつ)も、いろんな形のコがいます。

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夏から初秋にかけてはトマトの季節。緑のトマトは、輪切りにしてパン粉の衣をつけ、フライド・グリーントマトにするとおいしい☆ (昔、まさにそういうタイトルの映画がありましたねー。元気をくれるいい映画でした)

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秋のマーケットを彩るのは甘~くて濃い味のぶどう、爽やかな洋梨。

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そしてパンプキン! ぬひょーんと細長いバターナット、英語でドングリを指す、まさにドングリ型のエイコーン。栗カボチャも人気です

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このハーブはどうやって使うの? などの質問にも気軽に答えてくれます(忙しい時は別だけど)

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ここ数年でしょうか、日本のカブがマーケットでも人気! 生で食べてもおいしいですよね。

それにしても、縁日にしろ蚤の市にしろ、屋外にテントが林立してモノを売っている風景って、なにか無性に心躍るものがありませんか? あれってなぜなんだろう? 現代都会人の生活を「箱で暮らし、箱に乗って箱に働きにいく」と表現した文章を読んだことがあります。屋外の市場ってそういう箱から箱への人生からふと外に連れ出してくれる、手軽な“非日常性”を秘めた世界なのかもしれませんね。

ニューヨークで私がよく行くのは、ユニオンスクエアで月・水・金・土に開かれるマーケット。ニューヨーク市では最大の規模と言われています。目玉は野菜&果物だけれど、他にもいろんなものを売っています。ざっと挙げてみると、

 •はちみつ&ジャム
 •手作りチーズ
 •パン
 •フルーツたっぷりのパイやケーキ、クッキーなど焼き菓子
 •ワイン
 •ピクルス
 •ハーブ
 •搾りたてミルク&ヨーグルト
 •卵
 •魚
 •肉(鶏、鴨、豚、牛、羊などいろいろ)&ソーセージ


おお! 西洋風の食事を作るなら、必要な素材はすべて手に入るといっても過言ではないかも。切り花&鉢植え、羊毛で編んだニットや毛糸もあるんですよ。 私にとって欠かせない必須アイテムは、愛するニャニャムージカ・チャマスカヤ嬢のおやつ「猫草(※1)。ほんとにうれしそうに食べるので、ついイソイソと毎週買ってしまいます。

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手作りチーズ&ピクルスのお店も。つまり、発酵系がお得意なのね。

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ジンジャー・キャロットの漬けもの、買ってみたことあります。アルファルファのっけ+味噌ドレッシングかけはなかなかでした。次は「カレー風味のサワークラウト」かな・・・どんな味なんだろう・・・

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猫草ことウィートグラスのお店。青汁スタンドも兼ねる!?

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ゴロゴロと喉を鳴らしつつ草を食むニャニャムー姫。このお姿を見たいがために、毎週草を買いに市場に走ってしまう私って・・・飼われてます

ここ数年、世界的に「スローフード、スローライフ」を求める声が高まっているものの、スーパーの棚に並ぶのは冬場に南半球から空輸される苺やレタスだったりします。国土の広いアメリカの場合でも、北東部にあるここニューヨークで手に入る野菜のほとんどは5000キロメートルも彼方のカリフォルニア産。
土地によっては冬はキャベツ&お芋しか採れなかったりするので、いろいろなバラエティが楽しめるのはありがたいことだとは思いつつ・・・
旬を楽しむ=太陽のめぐりをも含んだ自然の恵みを祝うこと、でもある。

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オーガニック&バイオダイナミック(農薬を使わないだけでなく、自然発酵させた天然肥料を使ったり、種蒔きや収穫時期を決めるのに天体の運行を参考にするホリスティックな農業)のサラダ・グリーン。シンプルなドレッシングだけで食べても、葉っぱのおいしさがしみじみ~

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こちらもオーガニック野菜のスタンド。韓国系のオモニがやっていて、キムチや韓国風ドレッシングも売っているのです

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こちらは、オレゴン州ポートランドのファーマーズマーケット。アメリカ北西部って気候が温暖なので、おいしい野菜がいっぱい採れるのです

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これもポートランド発。左はマイルド、右は辛めとガーリックもいろいろ。奥に見える紫のインゲン豆は茹でると深い緑色に変身。

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リーク葱、フェンネル、セロリと「緑+白」の野菜のあいまに真っ赤なラディッシュを配置するセンスに脱帽。目にもごちそう!

秋から冬は、祝祭の多い季節です。10月末のハロウィーンにはパンプキン、11月末の感謝祭には七面鳥、そしてクリスマスが近づくころには樅の枝で作ったクリスマス・リース。冬じたくを重ねながらファーマーズマーケットに通い、この土地がくれる恵みを目でも舌でも味わいたいと思います☆

(※1)ニューヨークで最大のものは、市の環境評議会http://www.cenyc.org/site/ が運営している「グリーンマーケット」。ややこしいのでここでは「ファーマーズマーケット」と呼称を統一しておきますね。
(※2)ウィートグラス(wheat grass)ともいう、小麦または大麦の若草。マーケットに売りにくるおにいさんはこれを搾った青汁も作ってくれます。人間の健康にもいいらしく、スーツを着たビジネスマンが立ち寄って、エスプレッソみたいに「ツィー」と飲み干す姿も見られるほど。私も一度飲んでみましたが、ほんのり草の甘みがあって、飲みやすくてビックリしました。余談なり~

 

★次回の更新は10月26日(金)です! 

2007年10月12日 (金)

秋の音色、チェロのレッスン

  
  秋の日のヴィオロンの
  ためいきの身にしみて・・・


なんてヴェルレーヌ(※1)の詩を引用したくなるほど、秋の光は弦楽器の音色をひきたててくれるような気がします。

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一抹の哀愁を秘めた秋の日に(“秋の心”と書いて“愁い”ですものね)

弦楽器の音色がよく似合う・・・!?
なーんて書き出してみたのはっ! ワタクシも弦楽器を習っているからなんです♪ 私が習っているのはチェロ。ヴァイオリンやヴィオラより大きく、ベース(※2)よりも小ぶりな・・・ヨーヨー・マの弾いてる、あれです。

コトの起こりは一年前。いまは過去形で話せるものの、悩みごとを抱えていました。多くの「悩みごと」がそうであるように、ある人と気持ちがすれちがい、こじれなくてもいいはずなのにネジネジにこじれてしまったのです。来る日も来る日も胸に鉛がつっかえたようで、歩いていても地下鉄に乗っていても、油断すると涙がこぼれそうになって・・・。

言葉を使う仕事をしているせいか、こういうときはいろんな考えが頭のなかでグルグル渦巻いてしまいます。「あのとき・・・ていれば・・・けど、どうせ・・・だめだ・・・」云々、いやもうウルサイのなんの。仕事にも身が入らなくなってしまい、困り果てて友人に相談してみたら――。
「言葉や論理は左脳の領域って言うわよね。それなら、感性や直感を司る右脳を活性化させることをしてみたら? たとえば私は絵を描いていると時間を忘れてしまうの」
友人の言葉を聞き終わる前から<音楽だ>と思いました。チェロが目に浮かんでいたのです。

触ったことのある楽器といえば、小学校で習ったハーモニカとリコーダーくらい。そんな私がなぜ弦楽器などという大望を抱いたかというと、たぶんそれはオレゴン州にいたとき知り合った若きチェロ奏者、アダム君のおかげ。ちょっとクリックしてみてください・・・ねねね、かっこいいでしょ ?(※3)
というのはさておき。
私はダンサー、彼はミュージシャンとして共演したのがきっかけで知り合ったのですが、彼のチェロの音、実に気持ちいいのです。CDも2枚ほど持っていますが、特に秋から冬への季節に聴くと心が震えてしまいます。プロの彼みたいには弾けないだろうけど、あの深々と豊かな音の音符ひとつぶんでも、この手で奏でることができたら・・・

大人になってから習うなんて、大丈夫? 
そんな不安があったのも確か。でも、やってみないとわからない。試してみて絶望的だったら、そのときに諦めればいいのだから。

インターネットで探して出会ったのは、くりくりした瞳がおちゃめなピーター先生でした。「大人の生徒もたくさん教えてきたよ。81歳でチェロをはじめた女性もいたんです。大切なのは、自分の心の中の障壁を取り除くこと。何かをはじめるのに“遅すぎる”なんてことはないのだから

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ピーター・ルイ先生。子どもの生徒さんも多いので、教え方がかわいいんです。

そんな言葉に勇気づけられ、まずはマサチューセッツ州にある弦楽器の会社から楽器をレンタルしました。宅配で届いたチェロを見た時の感動といったら・・・。

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はじめての、チェロチェロ(小躍り状態)! ここだけの話ですが、名前もつけちゃいました。カシエル君といいます♪

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赤・黄・紺の色使いの可愛さに狂喜乱舞しつつ買った、はじめての楽譜立て。なぜかクマさんもついてきました。クマさん、いつも励ましありがと☆

仕事が忙しくて練習できないこともあるし、先生のお手本とは似ても似つかぬびょぉぉぉぉぉん・・・とケッタイな音を出してしまい自分で驚くこともしばしば。でも、あの美しい曲線を描いた楽器を腕に抱いて弓を滑らせると胸骨のあたりから音の震えが伝わってきて、気持ちよさのあまりトロトロ眠くなってしまうこともあるんです(←単なる寝不足という説もあるが・・・)。
「頭の中のひとりごと」も次第に減って、そのとき練習している課題曲が聴こえるようになりました(そしてひと月くらいした頃、悩みの種だった「こじれ」も解けてきたのです)。

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今週の宿題。新しい課題が出ると、まずは楽譜を読むのに一苦労・・・その後、「こ、こんな音でいいのか!?」と現実チェックの時間です。ゲージツの道は険しい。

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タリ~ラリ~♪ なんてすましつつも、音は合っているか? ちゃんとビブラートできてるか?・・・と、常にドキドキであります

楽器でも踊りでも外国語でも最初は難しく、もどかしいもの。でも「自分の惹かれるもの」を自由に習える特権は、大人だからこそ。何か学びたいものがあったら、ちょっとくらいは失敗したり“カメさんの歩み”で上達する許可を自分に与えつつ、とりあえず挑戦してみることをお薦めします!

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「スヤスヤ・・・マミーも上達したにゃあ・・・スヤスヤ」と安眠を貪るニャニャムージカ姫(←サクラ説も有り!?)

(※1)19世紀フランスの詩人。堀口大学氏や金子光晴氏などいろんな人が訳しているのですが、上田敏氏の訳(ここでも引用)がいちばん有名かも。
(※2) ダブルベース、コントラバスとも言う。ちなみにチェロはヴィオロンチェロとも呼ばれます。
(※3)Movieをクリックすると演奏しているところが見られます。あと、フォト・コーナーをみてみて! きゃ~アダムくぅーん、と黄色い声をあげてしまう可愛さです。うっいけない、おねーさんハシャギすぎちゃったわ・・・(赤面しつつ退場)

 

★次回の更新は10月19日(金)です! 

2007年10月 5日 (金)

北フランスのおやつ、ファー・ブルトン

秋といえば旅。ちなみに、夏といえば海。
なのになのにワタシ、今年の夏は日帰りでビーチさえ行けなかった!! うぅぉぉぉ~んん(号泣)

し、失礼しました・・・。
気を取り直して、今日はちょっとニューヨークから離れ、ヴァーチャル秋の旅に出たいと思います。行き先は北フランス、ブルターニュ地方♪

ブルターニュを旅したのは、2年前の秋でした。それはちょうど、夏の残照が秋の陽射しに変わる頃。パリから特急電車TGV(※1)に乗り換え、途中のレンヌ駅でローカル電車に乗り換えて約2時間半・・・石造りの城壁に囲まれた町、サン・マロで数日をすごしました。

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世界一速い特急電車TGV(テジュヴェ、と読みます)。揺れも少ないし、快適♪

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12世紀ごろ造られたというサン・マロの城壁。第二次世界大戦のとき、爆撃で破壊されたものの、市民が石を拾って持ち寄り再構築したそうです。

ブルターニュ名物の味といえば、まずはクレープガレットとも呼ばれる)。定番は、そば粉で作ったクレープに卵とチーズを落としたもの。お伴は林檎で作った発泡酒、シードルを、陶器の鉢でいただきます。フランスって“ワインの国”というイメージだけれど、北フランスのブルターニュとノルマンディーは気候のせいもあって葡萄よりも林檎のほうがよく育つみたい。そういえばサン・マロに行くローカル線の近辺にも、林檎の果樹園がいっぱいありました。 サン・マロに人が住みはじめたのは6世紀ごろ、城壁は12世紀ごろに造られたそうです。自動車が登場するはるか前に造られただけあって、城壁の中ではだんだん細くなっていく道や階段がいっぱい。石畳の迷路を歩いていくうち、ふと目の前の城壁の向こうに海が広がっていたりします。

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こんな石畳の道とか、

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階段があったりして・・・城壁の中は迷路のよう。

サン・マロ湾の向こうは英仏海峡、北の海。でもこのあたりはエメラルド海岸との異名どおり、トロンと優しい翡翠色をしていて、女性的、母なるものを感じさせる海なのです。この海水から採れるおいしい塩を使った塩バターキャラメルも名物のひとつ。普段はキャンディ類をほとんど口にしない私なのですが、これはおいしかった~。

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エメラルド海岸の異名をとる、優しくて穏やかな表情の海。

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海水がほんとうに翡翠色をしているのでビックリ! 向こう側に見えるのはサン・マロの隣町、ディナール。

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サン・マロの隣町ディナールのカフェで出会った、おじさんとワンコ。「お行儀がいいだろ」とおじさんは自慢げでした。

ブルターニュの名物おやつといえば、バターたっぷりのビスケット(これもガレットと呼ばれる)や、サクサクしたクロワッサンみたいな生地にキャラメルをからめたクイニーアマンがあります。でも、私にとって特にうれしかったのは本場のファー・ブルトンに会えたこと! 卵とミルクで作るプディングの一種とも言えるこのお菓子、カスタードクリーム好きにはたまりませんっ。

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こちらはパリに戻ってからブーランジェ(パン屋さん)で買った、ファー・ブルトン。けっこう大きめだったけど、熱々のカフェオレをお伴にペロリ!

旅から帰ってからもまた味わいたくて、レシピを調べて作ってみました。材料を混ぜて焼くだけなので手軽だし、焼いているうちにプーッとふくれるのを見守るのも楽しい。ちょっぴり風が冷たくなってきたなと思ったら、オーブンを温めて作ってみてくださいね☆

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卵、ミルク、砂糖・・・ファー・ブルトンって、いつも家にある材料でできるんです

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焼くとふくらむので、生地は型の高さ半分くらいまで入れるのがいいみたい。

<ファー・ブルトンの作り方>  
 1.オーブンを190℃に温めておく。1.4リットル入りの耐熱容器(※2)にバターを塗っておく。
 2.卵2コと砂糖(※3)70グラム、塩ひとつまみをボールに入れ、泡立て器で混ぜる。
 3.薄力粉70グラムをふるいながら加え、よく混ぜる。
 4.ミルク400ccを少しずつ加え、混ぜる。
 5.溶かしバター(有塩でも無塩でもよい)15グラムとバニラエッセンス小さじ1/2も加え、混ぜる。
 6.生地を型に流し入れ(焼いているうちにふくれるので、生地が型の高さ半分になるくらいがちょうどいい)、温めておいたオー ブンで45~60分焼く。焼き上がりを確かめるには、ぷーっとふくらんで表面がきつね色になったら竹串をさしてみる。竹串に なにもついてこなかったらできあがり。 保存は冷蔵庫で。

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ほらほらっ、ふくれてきました!

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焼き上がりはこんな顔。プーッとふくれたのがみるみる落ち着いてゆきます

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こちらは、いちじく入りバージョン。生のいちじくを四つ割りにしてのせてみました。プルーンやレーズンを入れたり、林檎をフライパンでソテーして入れてもおいしいのだそう(今度試してみようっと)。

(※1)Train a grand vitesse、直訳すると「超特急電車」。フランス版新幹線・・・というか、いまでは新幹線を通り越して世界最速の電車だそうです。時間通りに運行するし、清潔だし、揺れないし、快適♪  http://www.tgv.com/
(※2) これはパイ皿やグラタン皿、スフレ皿でも。私は16センチの底が抜けないケーキ型をふたつ使いました。生地が型の高さ半分になるような耐熱容器であれば、どんな型でも大丈夫です。
(※3)ざらめ以外ならどんな砂糖でもいいのですが、きび砂糖や三温糖を使うと優しい味に♪

 

★次回の更新は10月12日(金)です! 

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プロフィール

渡辺葉
渡辺 葉(わたなべ よう)
翻訳家・エッセイスト。慶応大学卒業後、カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校への留学を経て女優を志す。95年からニューヨークで暮らし始め、舞台女優として活動。現在はエッセイの執筆や料理本の翻訳などを手がける。料理とダンスが大好きな、好奇心旺盛な女性です。
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