極上の音の作りかた☆NYフィルのリハーサル見学
舞台は1/3ほど埋まっていました。あっちからバイオリンが、こっちからホルンが聞こえてきます。音階を上がったり下がったりウォームアップをする人もいれば、難しい箇所なのか、はたまた“聴かせどころ”なのか、特定のフレーズをくりかえし練習する人も。そうしているあいだにも、それぞれの楽器を手にしたミュージシャンたちがどんどん舞台に到着。皆さん私服のせいか、朝なのでちょっぴり眠たげな人もいるせいか、なんだかとっても親しみやすい気がします♪
ここはカーネギーホールと並ぶクラシック音楽の殿堂、リンカーンセンター。ニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラの“おうち”、エイヴリー・フィッシャー・ホールです。ここで一般公開のリハーサルがあると聞きつけ、さっそく訪ねてみました!
本日のお題目はショスタコーヴィチの交響曲4番ハ短調と、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調。なーんて、いかにも知っている風に書いてみたワタクシですが、クラシックは好きだけど超有名な曲しか知らないシロートであります。とにかく、ニューヨークが誇る交響楽団のリハーサルってどんな感じ? というミーハー精神で駆けつけてみたワケです。
NYフィルの現在の音楽監督はちょっぴりアンソニー・ホプキンス似のロリン・マ—ゼルですが、この日の指揮者はドイツからやってきたアンドレイ・ボレイコ。どです? なかなかかっこいいでしょ?・・・って、指揮者の人気投票してどうするっ(反省)。オーケストラが全員揃ったところでボレイコ氏が入ってきて、リハーサルがはじまりました。
リハーサル曲は、数時間後に本番のコンサートで演奏するのと同じもの。お芝居では初日の前日は照明や音合わせの「テクニカル・リハーサル」と、衣装をつけて本番通りに通す「ドレス・リハーサル」をやります。だからこのリハーサルでも本番と同じに演奏する通し稽古なのかと思っていました。
ところが、大違い!
ボレイコ氏「○○小節から、盛上げていく感じで」と手短に指示したあと、いきなりゴー! はじめて聴く曲なので何楽章かもわかりませんが、とりあえず思いっきり“途中”です。でもさすがにNYフィルですね。というか、プロの音楽家は皆ああいうものなんでしょうか。「助走」なしでいきなりジャンプ!!
しかし生の音楽っていいものですね~。バイオリンやヴィオラののびやかな旋律、トランペットやトロンボーンの勇壮な響き、チビ天使を思わせるピッコロの軽やかな音色。音の刺激が気持ちい~い☆ 前の晩睡眠不足だったせいか、つい座席にもたれてうつらうつらしてしまう。でもまだリハーサルだもんね、大丈夫だよね(何が!?)・・・
ショスタコーヴィチは、スターリン政権の共産党ソ連、1935~36年にこの交響曲を書いたそうです。お隣ドイツではヒトラーが再軍備宣言をしていた頃。ソ連ではスターリン独裁下、政敵の疑いをかけられた人々がどんどん暗殺されたり強制収容所送りになる「大粛清」の前夜でした。そんな中でこんなに心を揺さぶられるような音楽を作っていたなんて・・・。政権の気まぐれで褒められたり酷評されたりと、揺れながら作曲を続けた彼の心に思いを馳せてしまいます。
面白いのは、指揮者ボレイコ氏の指示の出し方。「ここは伸びるように・・・ポンポンポン、ラタタタタ・・・そして膨らみをもたせながら駆け抜けて」など感覚的な指示を出していきます。彼の一挙一動を見守り、一言一句を逃すまいと集中するオーケストラの面々のかっこいいこと!
指揮者の言葉を瞬時に消化して彼らが音楽を作っていく様子は、まるでみんなでひとつの彫刻を作り上げていくかのよう。「建築は凍った音楽である」と言ったのはゲーテだそうですが、逆に言えば、音楽は流れる建築か彫刻なのかもしれません。
2時間ほどショスタコーヴィチの交響曲をリハーサルしたあと、休憩をはさんでラヴェルのピアノ協奏曲。ラヴェルはベルエポックの、文化と文学が華麗に花開いた時代のパリで作曲していました。時代や環境を反映してか、彼の音楽は色彩豊かな夕焼けや、猫の足の裏を思わせる軽やかでいたずらっぽくさえもある音色に聴こえます。
3時間ちょっとのリハーサルは、当初予想していたような“通し稽古”ではなかったけれど、かえってコンサートという完成品を作り上げるアーティストたちの横顔を見ることができて、貴重なひとときでした。
★次回の更新は12月28日(金)です!















いいものを見てこられましたね!
オケの練習風景って意外と楽しくて興味深い事が沢山ありますから、
決して退屈しなかったでしょう。
1月末、私はMET行きです。
バックステージツアーを申し込もうかと思案中(予約が要るんですよね。)
それより真冬にカナダからの飛行機はちゃんと飛ぶのでありましょうか?
投稿 庭ふくろう | 2007年12月22日 (土) 13時22分
葉さんはじめまして! グラフックデザイナーをしている、Rieといいます。美大時代に葉さんの本に運命的な出会いをしてから、ずっとファンです〜。
最近このブロクを発見し、とても嬉しいです:)
葉さんがチェロを演奏なさるように、私も趣味でバイオリンを習っています。天下のNYフィルを身近に感じられる時に、ああ、NYに住んでいてよかった〜、と思います。
リハーサルへは行ったことがなかったのですが、2008年には絶対に行こう!と思います。
私はNYフィルでボランティアをしているのですが、これもまた素晴らしい演奏を真近で聴けるすばらしいチャンスですよ。
それではまた。
投稿 Rie H | 2007年12月22日 (土) 15時02分
庭ふくろうさま
METわたしもゆきたい〜。もう2年くらい行ってないんです。今年は「War and Peace」がよいと聞きます。あと1月末ならワグナーもやってるかも?? NYフィルのオープンリハーサルも、1/23と1/30にあるみたいですよ! 朝なので売り切れということはまずなさそうですし、お時間があればいかがでしょうか(私も寝ぼけマナコで観客席にいるかも)
Rieさま
こんにちは〜。当ブログにようこそ♪ NYフィルってボランティアもできるんですか? usherとか? ちょっと興味アリ。バイオリンもいいですね〜。チェロの音は大好きなんですが、雨の日にレッスンに行くときなどは「もっと小さい楽器にすればよかった・・・」と思います。かわいいバイオリンケース持ってお稽古にいくの、憧れです! がんばって練習して、いつかデュエットしましょうっ(鼻息)
投稿 葉 | 2007年12月23日 (日) 15時59分
渡辺 葉様、こんにちは。
ブログ再会されていたんですね。
4月から始まっていたなんて8ヶ月分損したような。
ところで、オーケストラリハーサルといえば、
僕も仕事の関係で一度見たことがあります。
大勢の演奏者をまとめあげていく指揮者のパワーってすごいですよね。
映画監督とも似通ったものを感じました。
ブログ、毎週楽しみにしていますね。
メリー、クリスマス。
投稿 由宇 | 2007年12月24日 (月) 14時12分
葉さん、私はそのワーグナーを見に行くんです。
でも日曜日にNYに着いて、月曜日の夜に見て、
火曜日にはもうこっちへ帰ってきます(泣)
もっといたいけど仕事しなきゃね。
今度は気候の良い時に行きたいです!
投稿 庭ふくろう | 2007年12月24日 (月) 16時28分
他の方は皆、オケラの話だっちゅーに「あぁっ、かわゆす!」とミキサー車のポップな模様に喜んでいる乗り物オタクです(笑)。
やっとこさ仕事納め、これから超日本的年末年始の過ごし方に突入。まずは大掃除から~♪
葉ちゃんも良いお年を~!
投稿 michiyo | 2007年12月27日 (木) 01時33分
ショスタコーヴィチはポッドキャストで聴いています。
投稿 | 2007年12月28日 (金) 06時33分
由宇さま コメントいただいていたのに、年を越してしまいました。あらためて、こんにちは~&あけましておめでとうございます! またまたいろいろ書いてゆきますので遊びにきてくださいね♪
庭ふくろうさま 触発されて、私もチケット取りましたよ☆ まだずーっと先なんですけど、トリスタン&イゾルデ。庭ふくろうさんのオペラ観劇はもうすぐですね!
michiyoさま 昔、ミキサー車に卵と砂糖とミルクを入れてアイスクリームをたっくさんたっくさん作る・・・という子どもにとってはもうウハウハな絵本があったの、ご存知でしょーか。
投稿 葉 | 2008年1月12日 (土) 10時25分